2011年7月15日金曜日

異物をどう入れるか、というデザイン

書籍の電子化のことを考えるに、今までの一方向的、定着的な編集のあり方が、ある分野ではがらっと変わる可能性を感じています。拾い読みも込みで、冊子全体の流れが存在するのもそうだし、見開きという単位の中でも、読者の歩むストーリーをレイアウトという道しるべに落し込むことで、はじめから終わりまで、「迷いなく」読み進んでもらうことがまずは基本命題だったのですが、そこに読者のアクションを混ぜていくことができる電子書籍やウェブでは、どこまで「迷いやすさ」をデザインするのか、というような、もう1段複雑な関係性を組み込むことができる可能性があるからです。

僕がデザインする感覚で言うと、これは書籍の「可読性」に似た話で、ふつうの人は「読みやすさ」だけで書籍を買ったりはしないし、それだけをデザインの評価軸にはしないと思っています。まずは読む人物像をイメージしながら、どんなデザインをすればそのコンテンツが最大限「活かされるか」を判断します。可読性が最優先事項になると、極端な話、版型ごとに1フォオーマット、インデザインファイルを用意しとけば全てデザインできちゃうわけです。つまり視点を変えれば、どこまで「読みにくく」するか、どう「ひっかかり」を作るかが、僕がデザインをする上での一つのポイントだったりします。

ある意味まっすぐの道を作るのは、生地づくりの部分というか、地道な積み重ねと基礎的な鍛錬の部分で、それはそれで大変難しいひとつの「技術」です。前段で極端なことを言いましたが、その最強の「フォーマット」には、ゴールがない。ただ、全てを理論的に整理していくと、最終的に「魅力」を纏わない、というのが僕の経験上感じていることです。まっすぐを研ぎすますことと、そのまっすぐのどこに迂回路を作るか、多少歩きにくい砂利道でも、そのほうが風景に浸れる、砂利を踏む音が演出になる、とかとか、そこにストーリーを作っていくことがデザインの本当に面白いところです。

その幅が、恐らくいままでの印刷物のデザインとは全く違う領域に踏み出せるという可能性に、すっごい興味があるのです。書き手の、そして編集の表現の幅もまた違う次元に広がるわけで、これは早急にいろいろやってみなければと思っている次第です。

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